2016年8月26日インドネシア特許法改正のポイント
2016年8月26日付けで、改正インドネシア特許法が施行されました。この改正による主な変更点は以下の通りです。なお、改正特許法は、2016年8月26日以降の出願に適用され、それ以前の出願には依然として旧特許法が適用されるのが原則のようですが、年金制度に関しましては経過措置が設けられております。
※当初、改正法の適用は、2016年8月28日以降の出願と伝えられていましたが、正しくは2016年8月26日のようです。
・年金制度改革
旧特許法におきましては、インドネシアの特許権は年金を不納にしたとしても、3年間は権利が存続しておりました。このため、年金不納にした年から3年分の特許年金は特許権者の債務となるという、世界的に見ても希な年金制度になっておりました。
改正特許法では、この不可解な年金制度が是正され、年金不納により特許権は消滅し、特許権者に対して、追加的に年金債務が発生するということはなくなりました。具体的には、特許後は、出願日を起算日として1年毎に保護期間が設定され、次の保護期間の開始日の1ヶ月前までに、その年金を支払わなければなりません。
また、旧特許法におきましては、特許付与がなされた場合、特許付与日から1年以内に出願日から特許付与までの間に累積された出願維持年金を一時に支払わなければなりませんでしたが、改正特許法では、この期間が6ヶ月に短縮されるとともに、次年度1年分の年金も併せて納付しなければならなくなりました。これらの年金を6ヶ月以内に支払わない場合、特許権は無効とみなされますのでご注意ください。
なお、2016年9月30日付けでインドネシア特許庁よりなされた通知によりますと、旧特許法で発行された特許権につきましても、2016年8月26日以降に到来する年金支払期限につきましては、改正特許法が適用されるとのことです。但し、12月30日までに、本年及び来年の年金を支払わなければなりません。この支払いがなされない場合、特許権は消滅するとのことですのでご注意ください。
・オフィスアクション応答期限延長の明文化
旧特許法におきましては、オフィスアクション応答期限延期の可否は、インドネシア特許庁の運用に委ねられておりましたが、改正特許法では、オフィスアクションの応答期間は3ヶ月であり、1回目の延期申請で2ヶ月の延期が認められ、2回目の延期申請で1ヶ月の延期が認められることが明文化されました。日本の特許法における審査段階の延長と同様に、特許法条約に対応した内容となっています。
・コンピュータプログラムの保護対象化
旧特許法におきましては、コンピュータプログラムは保護対象ではありませんでしたが、改正特許法におきましては、技術的特徴を有するコンピュータプログラムは方法の発明として保護対象に加わることとなりました。
・第2用途発明の非特許化
旧特許法におきましては、既存物質の第2医薬用途発明は特許されましたが、改正特許法におきましては、このような第2医薬用途発明は特許されないこととなりました。
・特許権侵害の例外
旧特許法では規定されていなかった、次の2つの行為が、特許権侵害の例外として定められました。
- (1)他国で適法に販売されている医薬品をインドネシアに輸入する行為。特許権者の承諾の有無は問わない。
- (2)特許期間満了後に販売することを目的として、特許期間満了前5年以内に、医薬品をインドネシアで製造する行為。
インドネシア国内における医薬品価格の適正化を促すとともに、特許期間満了後に速やかに医薬品をインドネシア国内に供給できるようにするために導入されました。
・付与後異議の導入と審判機関の権限拡大
旧特許法におきましては、存在しておりませんでした付与後異議申立が新たに導入されるとともに、審判機関の権限が拡大されました。これまでは、審判機関では、拒絶された特許出願に対する審判請求に関してのみ審理を行っていましたが、改正特許法におきましては、これに加えまして、特許後のクレーム、明細書、及び、図面の訂正と、付与後異議における特許維持決定に対する審理を行うことができるようになりました。
文責: 弁理士 関根 毅
〔初稿〕 2016年09月02日
〔改訂〕 2016年10月25日
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