インド特許規則の改正 | 協和特許法律事務所

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インド特許規則の改正

カテゴリ: IPニュース 公開日:2024年04月09日(火)

 インド特許意匠商標総局を管轄する商工省産業国内取引促進局(DPIIT)が2024年3月15 日に「2003年特許規則(2024年改正)」を公開しました。
 以下にその概要を記載します。

 

1.Section 8 (対応外国出願情報の報告義務の緩和)
 a. Section 8 (1):改正前では、規則12(2)に基づき、出願時に入手できなかった対応外国出願(Form 3)の詳細は、当該外国出願の出願日から6ヶ月以内に提出することになっておりました。これに対し、改正後では、規則12(2)に基づく詳細は、最初のオフィスアクションの発行日から3ヶ月以内に提出することに改正されました。したがって、規則12(1A)に基づきインド出願から6ヶ月以内に最初のForm 3を提出した後、出願人は最初のオフィスアクションが発行されるまでForm 3を提出する必要がなくなりました。尚、規則12(1A)に基づく、インド出願から6ヶ月以内のForm 3の提出は以前と同様に必要です。
 b. Section 8 (2): 審査官は、公的データベースを用いて、インド国外での出願処理に関する情報(審査履歴)を参照することができます。審査官は、出願人に対し、理由を付してさらなる提出を求めることができます。そのような場合、出願人はその連絡から2ヶ月以内に情報を提出しなければなりません。
 c. Section 8の対応外国出願情報の提出は、規則138に基づいてForm 4による請求を提出すれば、最大6か月延期することができます。 この規則138の改正は、従来、規則137に基づいてSection 8の延期を許可してきた実務を変更するものです。但し、延長費用が掛かりますのでご注意ください。

 

2. 分割出願  (仮出願および分割出願からの分割出願が可能になった)
 Section 16に基づく分割出願は、仮出願明細書または本出願明細書に開示された発明について出願できます。また、分割出願から分割出願を行うことも可能となります。この規則は、特許法が分割出願から分割出願を行うことを禁止していない、とした様々な司法機関の判決を成文化したものです。

 

3. 審査請求 (審査請求期限の短縮)
 審査請求期限が、優先日~48ヶ月から優先日~31ヶ月に変更されました。ただし、改正規則の施行日(2024年3月15日)より前の出願(PCT国内移行を含む)については、優先日~48ヶ月の期限が適用されます。 
 PCTからインドへ国内移行する場合、国内移行と同時に審査請求を指示することが必要となります。尚、国内移行期限と審査請求期限について、規則138に基づく延長が可能となりますが、延長費用が掛かりますのでご注意ください。

 

4. 新規性喪失の例外適用出願の猶予期間 (グレースピリオド)
 Section 31に基づく猶予期間を利用するために、新しいForm 31が導入されました。この猶予期間は、出願人が発明を展示会で展示し、または、学会で論文を発表した日から12ヶ月以内に特許出願を行うことを認めるものです。

 

5. 付与前異議申立て (審理促進と軽率な異議申立の削減)
 a. 付与前異議申立ての手数料が規定されました。これにより、或る程度、軽率な異議申立てが抑制されると思われます。
 b. 審査官はまず、申立てに一応の疎明性があるかどうかを判断します。異議申立人に対し、異議申立てを正当化するための聴聞を行うことができ、その後、聴聞から1ヶ月以内に、審査官は、申立ての拒絶または受諾の理由を記録した命令を下します。これにより、或る程度、軽率な異議申立てが抑制されると思われます。
 c. 異議申立ての通知を受け取った場合、出願人は、通知から2ヶ月以内に意見書と証拠を提出する必要があります(以前の3ヶ月という期間よりも短縮)。これにより、審理の促進が図られます。
 d. 付与後異議申立に適用されている費用の裁定や審理の出席通知などは、付与前異議にも適用されます。

 

6. 付与後異議申立 (決定期間の短縮)
 付与後異議申立において、異議申立の審判部が審査官に対して見解を提出する期限が、従来の3ヶ月から2ヶ月に短縮されました。

 

7. 発明者証明書 (Section 28に基づく申請)
 Section 28に基づき、特許出願に発明者として記載される人が請求することができます。 改正規則では、Section 28に基づく請求がなされた場合、審査官は、発明者証明書を発行する権限を有しています。

 

8. 更新料 (一括納付の場合の減額)
 更新手数料を4年分以上まとめて前納する場合、e-ファイリングによる納付に限り、庁費用の10%が減額されます。

 

9. 実施報告書 (報告負担の軽減)
 改正前では、付与された特許の実施報告書は、特許が付与された会計年度の直後に始まる会計年度ごとに提出しなければなりませんでした。改正後では、実施報告書の提出の頻度が3会計年度ごとに1回に変更されます。実施報告書は、その期間満了の日から6ヶ月以内に提出しなければなりません。例えば、特許が2024年3月20日に付与された場合、最初の実施報告書の提出期限は2027年9月30日となります。
 実施報告書の提出は、規則138に基づいてForm 4による請求を提出すれば、最大6か月延期することができますが、延長費用が掛かりますのでご注意ください。

 

10. 規則137 の改正 (遅延を容認する範囲が縮小され、以下の事項の場合、規則 137 に基づく期間延長や遅延容認を求める請願書の提出はできなくなった
 a. Section 8(2) 最初のオフィスアクションの発行後のForm 3 の提出期限の延長。
 b. PCT国際出願のインド国内移行期限及びその英訳の提出期限(優先日~31か月)。
 c. 規則21に記載された場合におけるPCT国際出願の優先権書類及び優先権書類の認証された英訳の提出期限(優先日~31か月)。
 d. 審査請求期限(優先日~31か月)。
 e. 付与前異議申立における出願人の意見書及び証拠の提出期限。
 f. 更新手数料の提出期限の6か月延長。
 g. 審査官による指示や指令の再検討要求の期限。
 h. 実施報告書の提出期限。

 

11. 規則 138の改正 (延期費用は高くなるが、延期期間は長くなる)
 改正前では、所定の手続期間についてのみ、1ヶ月だけ延長することが認められていました。改正後では、規則 138の適用範囲が拡大され、特許規則に基づくすべての手続きについて延長が適用されます。Form 4による正式な延長請求を提出することにより、最大6ヶ月の延長が可能となります。 規則138に基づく延長請求は、所定の期限から6ヶ月が経過する前に提出しなければならなりません。このような延長請求は、6ヶ月を経過する前であれば、いくつでも提出することができます。 したがって、規則137に基づき例外となっていた手続は、規則 138の延長でカバーされます。自然人、新興企業、小規模法人、教育機関以外の法人に適用される手数料は、月ごとに50,000インドルピー(約600USドル)となっています。

 

インド特許庁サイト (MINISTRY OF COMMERCE AND INDUSTRY (Department For Promotion of Industry and Internal Trade) NOTIFICATION New Delhi, the 15th March, 2024):
extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://ipindia.gov.in/writereaddata/Portal/IPORule/1_83_1_Patent_Amendment_Rule_2024_Gazette_Copy.pdf

 

JETROサイト (2024年3月20日ニュース):
extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2023/in/20240320r.pdf

 

パートナー・弁理士 赤岡 明

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