中国専利法実施細則・審査指南の改正について | 協和特許法律事務所

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中国専利法実施細則・審査指南の改正について

カテゴリ: IPニュース 公開日:2024年01月15日(月)

 中国専利法実施細則・審査指南が改正され、2024年1月20日から施行されます。改正法の概要は以下の通りです。

 

1.郵便猶予期間の廃止
2024年1月20以降、電子出願システム経由で発送された中国特許庁(以下、庁またはCNIPA)からの書類について、15日間の猶予期間が付加されなくなります。これにより、局通知に対する応答期間には、15日間の猶予期間は適用されなくなりますので、ご注意ください。尚、紙書類で郵送された庁書類については、これまで通り15日間の猶予期間が付加されます。

 

2.引用による補充
 パリ条約の優先権を主張して中国へ出願した場合、中国出願日から2か月または庁の指定期間内に、優先権主張出願の明細書、特許請求の範囲の全部または一部を基礎出願に基づいて補充すること(以下、引用による補充)が可能となります。
 また、PCTの規則20.5に基づく「引用による補充」を行っている場合も、中国への国内移行時に補充部分の中国語訳等を提出することによって、その国際段階における「引用による補充」は受け入れられます。
 この規定は、中国出願日または国内移行日が2024年1月20以降の出願に適用されます。
 尚、「引用による補充」は、優先権の「回復」、優先権の「追加・訂正」が適用されている場合、あるいは、分割出願には適用されません。

 

3.優先権の「回復」
 優先日から12か月~14か月に出願した場合、優先日から14か月以内に優先権書類の副本と優先権回復請求を提出することよって、優先権の回復を請求することができます。
 この規定は、優先日から14か月が2024年1月20以降の出願に適用されます。
 また、PCT国際段階で優先権の回復が受理官庁で認められた場合、CNIPAは、優先日から14か月以内に行われたPCT国際段階での優先権回復を認めます。PCT国際段階で優先権の回復が認められなかった場合、正当な理由を示すことで、中国への国内移行日~2か月以内に優先権の回復を請求することができます。
 この規定は、国内移行日から2か月が2024年1月20以降の出願に適用されます。
 尚、優先権の「回復」と優先権の「追加・訂正」との両方を同一出願に適用することはできません。

 

4.優先権の「追加・訂正」
 優先日から16か月以内に優先権の追加または訂正を請求することができます。
 この規定は、優先日から16か月が2024年1月20以降の出願に適用されます。

 

5.優先権書類・優先権譲渡書の提出期限
 出願人の不一致によるによる優先権書類の副本または優先権譲渡書の提出期限は、優先日から16ヶ月以内になります。

 

6.発明者変更
 発明者の追加や削除は、受理通知書を受領してから1ヶ月以内に申請する必要があります。この場合、申請書とともに、出願人全員および変更前後の発明者全員の署名、変更理由等を示した宣誓書を提出しなければなりません。尚、発明者の表記の誤記訂正については、期限はありません。

 

7. 遅延審査および連結審査の導入
 特許出願と同様に、実用新案出願の出願人は、遅延審査を請求することができます。実用新案の遅延審査は、遅延審査請求が発効してから1年単位で最長3年までとすることができます。
 意匠出願の遅延審査は、遅延審査請求が発効してから1ヶ月単位で最長36ヶ月までとすることができます。
 尚、遅延審査の請求は、遅延期間の満了前に取り下げることができます。
 技術内容、出願人又は発明者に関連性がある出願については、連結して審査することが可能になります。

 

8.新規性喪失の例外適用要件の緩和
 新規性喪失例外の学術・技術会議は、従来、中国国内における学術・技術会議のみでしたが、国務院の関連当局に認められた国際機関が開催する学術・技術会議も含まれるようになります。また、新規性喪失例外の申請には、会議の主催者が発行した証明書は不要となります。

 

9.特許存続期間補償制度(PTA(Patent Term Adjustment))
 出願日から4年又は実体審査請求日から3年のいずれか遅い日までに設定登録がなされなかった場合、特許権の設定登録の公告日から3カ月以内に申請することにより、審査の遅延期間について特許権の存続期間を延長することができます。ただし、出願人の帰責理由により審査が遅延した期間(例えば、局通知に対する応答期間の延長期間等)は除かれます。また、特実同日出願制度を利用した特許出願については、PTAは適用されません。
 PTAは、2021年6月1日以降、設定登録の公告日から3カ月以内に申請可能となっており、2024年1月20以降のPTA審査に適用されます。

 

10.職務発明者への最低奨励金
 職務発明者が奨励金について合意していない場合、最低奨励金は3,000元から4,000元に引き上げられ、実用新案と意匠の最低奨励金は1,000元から1,500元に引き上げられます。

 

11.コンピュータ関連発明
 コンピュータプログラムの発明は、特許適格性が認められるようになり、物理的媒体に組み込む必要がなく、オンラインのソフトウェアもカバーできるようになります。

 

12.医薬品関連の特許
 医薬品特許の存続期間延長制度(PTE(Patent Term Extension))は、「新薬」に含まれる医薬品有効成分(API)の製品特許、製造方法特許、医療用途特許に適用されます。PTE の延長期間は、特許出願日から中国で新薬の販売承認を得た日までの期間から、5年を減算した期間となります((中国で販売承認を得た日-中国特許出願日)-5年)。PTEの延長期間は、最大5年であり、医薬品の販売承認後の存続期間は合計14年以下となります。

 

13.復審請求の前置審査は、拒絶査定を下した審査官とは別の審査官が行います。

 

14.特許出願、実用新案出願でカラー図面の提出が可能になります。

 

15.実用新案出願・意匠出願の審査で進歩性を審査
 実用新案出願・意匠出願で、進歩性が欠如するか否かの審査を行うようになります。また、被疑侵害者が実用新案、意匠権の評価報告書を請求可能になります。

 

16.部分意匠出願の要件が追加されます。

 

17.GUI(Graphical User Interface)意匠出願が可能となります。

 

18.意匠出願は、特許出願または実用新案出願に基づいて国内優先権主張が可能となります。この場合、優先権主張の基礎となる特許出願または実用新案出願は取下げ擬制されません。

 

以下、CNIPAの関連リンクです。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6921633.htm
https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/12/21/art_74_189199.html

パートナー・弁理士 赤岡 明

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