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欧州特許庁における早期審査プログラム「PACE」の運用改訂

   

 2016年1月1日に運用が改訂された欧州特許庁における早期審査プログラム「PACE」について、今回の改定を含め、以下に簡単に説明します。


■ PACEとは

 出願人が申請を提出するだけで特許出願の審査を早めることができるとともに、出願維持年金の支払いを削減するための制度です。
 通常、欧州出願における特許査定までの平均係属期間は、45〜60ヶ月と非常に長いですが、PACEを利用することにより、19〜22ヶ月程度に期間を短縮化することができます。
 このPACEには、調査段階のPACEと、審査段階のPACEがあり、出願人がこれらの一方または両方を選択することができます。
 手数料は、PPH同様に不要であり、さらに、必要書類が少ないこと等の理由から、現地代理人費用を、PPH利用の場合と比較し抑えることができます。
 また、申請の理由を説明する必要がなく、PACE申請をしたことは公表されません。


■ 改訂内容

 改訂されたPACE(Programme for Accelerated Prosecution of European patent application)」プログラムは、2016年1月1日以降に請求されたPACE請求に適用されます。改訂の内容は以下の通りです。


(1)PACEの請求回数の制限

 PACE請求は、調査段階と、審査段階で、それぞれにおいて1回のみ可能。
 なお、調査のPACEと、審査のPACEは、別々に請求する必要があります。すなわち、調査段階でPACE請求を行っても、審査促進のトリガーとはならず、出願処理責務が審査部に移行した後、審査のPACE請求を行う必要があります。


(2)PACEプログラムからの除外対象の条件を明記

 以下に該当する場合、出願は、PACEプログラムから除外され、2度目のPACE請求は認められません。

  • PACE請求の取り下げ
  • 出願人による期間延長の請求
  • 出願の拒絶、取り下げ、取り下げ擬制

(3)PACE請求数の制限

 出願人が、全てまたは多くの出願についてPACE請求を行った場合、欧州特許庁は、出願人に対し、PACE請求の数を減縮するように要求します。


(4)調査段階におけるPACE申請の対象案件の変更

 2014年7月1日以降のEP出願(欧州特許庁が国際調査機関/補充国際調査機関ではない、PCT出願のEP広域移行案件を含む)については、調査段階におけるPACE請求は不要となりました。この種のEP出願については、出願日もしくは規則161(2)の期間経過後6ヶ月以内にサーチレポートを発行するよう努めることになっているためです。よって、調査段階におけるPACE請求の対象となるものは、2014年7月1日より前に出願されたEP出願(欧州特許庁が国際調査機関/補充国際調査機関ではない、PCT出願のEP広域移行案件を含む)であって、優先権主張を伴う出願に限られます。


(5)努力義務を規定

  • 調査のPACE請求の受領後、6ヶ月以内に調査報告を発行するように努力する。
  • 審査のPACE請求後、審査部での出願受領、EPCA規則70aに基づく出願人の応答、またはPACE請求の受領のうち、最も遅いものから3ヶ月以内に次ぎの審査報告を発行するように努力する。
  • 欧州特許庁は、出願人の応答から3ヶ月以内に次ぎの審査に関する通知を作成するよう努力する。

(6)PACE以外の審査促進方法

 欧州特許庁は、PACE以外の審査促進方法として、以下の4つの方法を紹介しております。

  • 規則70(2)の通知を受ける権利の放棄
  • 規則161および162の通知を受ける権利の放棄
  • 規則71(3)の通知を受ける権利の放棄
  • PCT出願の早期移行


[参考]

欧州特許庁「Changes to PACE programme from 1 January 2016

欧州特許庁「Notice from the European Patent Office dated 30 November 2015 concerning ways to expedite the European grant procedure



文責: 弁理士 末盛 崇明